靴 しゃべる

実は一年ほど前から、靴に気を使うようになった。

といっても、高い靴を履くようになったという話ではなくて、

靴を思いやるようになった。


それまでの僕は、靴は一足だけを履き続け、特に手入れもしなかったものだから

いつも半年で履きつぶして買い替えていた。

紐つきの履きやすい、やわらかい生地を好んで履き

いつもかかと、ソールがはがれ、買い替えていた。

それが一年前の僕。

いつも履きつぶす靴のすり減り具合、ダメになる具合から、自分の足の形が少しおかしいということに気づき始めていた。

そう、俗にいう、外反足だったのである(内側に重心があるので靴の内側がすりへりやすい

この状態だと、靴をはきつづけると、内側がすり減り、よけいに姿勢や足に負担がくる。

これをどうにかしないとと思い、靴屋に相談したところ、アドバイスは二つ

かかとがしっかりしたものを履くこと
毎回、靴ひもをしっかりしばること

なんでも、やわらかい靴ははきやすいが、実は身体によくないというもの。靴が足にぶらさがる感じになり
足にとっては負担になるとのこと。

というわけで、だまされた気になって、あとは外反足が少しでもましになるようにと、

かかとがしっかりした靴を、毎度毎度靴ひもをしっかりとしばって履くようになった。


それからの生活は、以前のものとは変わっていった。

若干靴の値段が高かったというのもあるが、毎度毎度靴ひもをしっかり縛って履き
ほどいて脱ぎということをしていたせいか

いつも家に帰って靴を脱ぐ時は

「今日も一日ありがとう」

と何か語りかけるようになっていた。

そういって消臭スプレーをかけるようになった。

靴をいたわるようになったのである。

そんな生活を続けていく中で、靴を大切にすることの重要性を説いた本にもいくつか出会い

この習慣は続いた。


靴を大切にすると人生が変わるとか、本に書いてあるのは多いが、
最初は疑心暗鬼であった。

割と自分の中の意識では

・ちょい高かったし長く履きたいな
・外反足がなおっていけばいいな

というのが強かった。


が、一年ほどたった今、振り返ってみると、自分の生活がそれまでと劇的に変わったことに気づいた。

良いことも、悪い事も、本当に色々あった一年だったが
確実に言えるのは、自分自身、色々とそれまでできていなかったこと、考えられなかったことを実現できてきた。

色々ありすぎてここでは書ききれないが、その片鱗は過去のブログをみてもらえば分かるかもしれない。

一言でいうと、行動力が増した。

意識的にそうしている部分はあるけど、今日、ある出来事があって、もしかしてこれは靴のおかげなのかもと思ってしまった。

かなり怪しいことを言っていると思うが、そうなのかもしれない。


その出来事というのは、そう、靴がしゃべったのだ。


最近、なんだか以前の自分では出会うことのなかったような人に出会うことがよくある。
縁といえばそれまでだけど、なんだか多いのだ。

今日という一日もそんなことがあった日だったのだが、

最寄り駅から家路へ向かう途中
そういった、最近の自分の身の回りに起きていること、出会う人々について思いをめぐらせていたときに



「もっといいところに連れて行ってあげますぜアニキ」


という声が聞こえた。


お酒を飲んでいたせいもあるけど、そんな経験はこれまでなかった。
100%思い込みなのであるが、足下をみたときに靴がそうしゃべった。
正直なところ、アニキとは言ってなかったが。


なんだか書いていて非常に怪しい内容ではあるが、
なんといっても靴である。

毎日自分の全体重を支えてくれるものである。
雨の日も、風の日も
春夏秋冬
気分が良いときも、悪いときも。

次に靴がしゃべるのはいつなのだろうと思いながら

これからも大切に履いていこうと思ったのであった。